第30回:さっそく使いたくなる! 「三国志」由来の故事成語を大特集!!

文:中国エトセトラ編集部

「水魚の交わり」という故事成語は、諸葛亮と劉備の関係を示すのにピッタリ

中国では「曹操の噂をすれば曹操が来る」という諺まである曹操

若き君主・孫権が率いた呉が発祥の故事成語も多数存在する

ドラマでは、仁君・劉備が発する言葉の数々にも注目!

重厚な人間ドラマはもちろん、ド派手な戦闘シーンも本作の見どころの1つ

DVDシリーズの第1部が10月27日(水)よりレンタル開始、そしてDVD-BOXの前篇が12月10日(金)にリリース決定と、着々と日本上陸に向け準備の進む中華歴史ドラマ列伝「三国志」。今回はそんな本作にちなみ、劇中に登場する武将や出来事が由来となった故事成語を、魏・呉・蜀の三国ごとに大紹介。これを読めば、日常会話で故事成語を使いたくなること間違いなし!...かも。

魏:鶏肋(けいろく)

鶏肋とは鶏のあばら骨のことで、食べられる部分はほとんどないものの、良いダシが取れることから「大して役に立たないが、捨てるには惜しいもの」を指す言葉として今日でも使われている。「三国志」では、曹操が漢中の地を巡り劉備と争っていたときに、この言葉を呟いている。そこから家臣の楊修(ようしゅう)は「諦めるには惜しいが、漢中攻略は断念せざるを得ない」という曹操の内心を推測し、撤退準備を始めてしまう。その勝手な行動に曹操は激怒し、楊修を処刑してしまったという。

魏:七歩の才(しちほのさい)

曹操の後継者にして、魏の初代皇帝である曹丕(そうひ)。あまりにも優秀であったが故に幼少時より冷遇されてきた曹丕は、父の寵愛を受ける他の兄弟を激しく憎んでいた。やがて皇帝の座に就くと、権力を駆使して次々と兄弟を死に追いやっていった。だが、弟の曹植(そうしょく)に「七歩あるくうちに詩を作れなければ処刑する」という無理難題を押し付けたときのこと。曹植は七歩あるく間に「兄弟同士で争うことの悲しさ」を題材にした詩を見事に歌い上げ、曹丕を大いに感動させたという。このことから、非常に文才のあることを"七歩の才"と言うようになった。

呉:苦肉の策(くにくのさく)

赤壁の戦いの際、魏の大艦隊を打ち破るべく考案された作戦。呉の武将・黄蓋(こうがい)は、些細なことで司令官・周瑜(しゅうゆ)と口論になり、兵卒の前で鞭打ち刑に処せられてしまう。これを恨みに思った黄蓋は曹操軍に投降。最初はいぶかしむ曹操だったが、間者の報告もあってその言い分を信用し、黄蓋を自軍に迎え入れてしまう。こうして船団に潜入した黄蓋は、内部から火を放ち、曹操軍を壊滅させることに成功する。この事例から"苦肉の策"は「敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行う謀」を指す言葉として知られるようになる。しかし現代では「苦しまぎれに考え出した手立て」という意味での使われ方が支配的になっている。

呉:破竹の勢い(はちくのいきおい)

"勢いがついて止めようがない状態"を表す言葉。守勢を貫き、三国間の争いを最後まで生き残った呉。だが、魏に取って代わった晋の台頭は凄まじく、呉討伐を任された武将・杜預(とよ)は、大軍勢を引き連れて、次々とその領土を奪っていった。だが、行軍の途中で長雨の降る時期にさしかかってしまい「一旦引き上げて、雨の降らない季節に改めて進軍しよう」という意見が出た。だが杜預は"竹は丈夫だが、少しでも割れ目を入れれば、割ってしまうのは簡単"であることを例に上げ「今の勢いで攻め込めば、簡単に呉を落とせる」と味方を鼓舞し、呉への侵攻を続けたという。

蜀:泣いて馬謖を斬る(ないてばしょくをきる)

劉備没後、蜀の全権を託された諸葛亮は、魏と幾度にもわたる戦い(北伐)を繰り広げていくのだが、その第1次北伐の際、街亭(がいてい)と呼ばれる地での戦いの指揮を、愛弟子の馬謖(ばしょく)に任せた。だが功名を焦った馬謖は、諸葛亮の指示を無視した布陣を布き、大敗を喫してしまう。他の武将たちは、たった1度の失敗で有能な馬謖を罰することはないと訴えたが、諸葛亮は「私怨私情で法や規律を曲げて責任を不問にすることがあってはいけない」として、涙ながらに馬謖を処刑した。現代でも、不祥事を起こした人物を処分する際などに、この言葉が使われることがある。

蜀:水魚の交わり(すいぎょのまじわり)

劉備が諸葛亮を軍師として迎え入れたときのこと。新参者の諸葛亮が劉備と親しくしていることがおもしろくない関羽と張飛に対し「水がなければ魚は生きていけないように、諸葛亮は私にとって必要不可欠な友なのだ」と釈明し、2人を納得させた。ちなみに中国では、水と魚の関係は夫婦の関係の例えとしてよく使われていた。なので、男と男の信義を誓い合った"桃園の誓い"とは全く異なる結びつきということになり、関羽たちも納得して引き下がったという。


今回紹介した以外にも「三国志」には、まだまだ有名武将が由来となった故事成語が多数存在しています。各言葉の元となった人物がどこで登場するか? そういった点に注目して観れば、ドラマシリーズもより一層、楽しむことが出来るのではないでしょうか。